2002年 なにわ人形芝居フェスティバル 全国脚本公募 選評

 大賞は審査員、全員一致で『子宝観音』に決まった。どちらかといえば地味な話にもかかわらず、読み手を前へ前へ進めていくのは、その語りと会話に力があるからだろう。キャラクターがきちんと作られているから、その台詞や行動が不自然さがなく、この呑気な観音や薬師如来のいる世界に気持ちよく浸っているうちにきちんと納まるべきところに納まって物語が終わる 物語を前に進めるのは派手なストーリーや展開だけではないといういい例。

 優秀賞の『ビルとすもうをとった少年』は、まずタイトルがおもしろい。このタイトルだけでも、いったいどんな話なのかと期待させる。タイトルというのも作品を構成する大切な部品のひとつ。そして、読んでみるとこれが比喩でもなんでもなく、本当にビルと少年がすもうをとる話なのである。これは、人形劇ならではのおかしさだろう。
 取り壊される家と新しくそこに建つビルという、ともすれば勧善懲悪になってしまいがちな展開を、両方の側にきちんと立って、安易に悪者を作らなかったという点もよかった。

 もうひとつの優秀賞の『どぶんこゲル』は、どぶのなかという舞台設定がまずユニークであり、そこから展開される汚物的世界と様々なキャラクターに人形劇としての可能性を感じさせる。

 審査員特別賞としては『子鬼のタプタプ』を選んだ。全体にとぼけた感じが漂っており、子鬼と警察が同じ世界に同居していたりするするところに、子供のリアリティとでも呼ぶべき奇妙な感覚がある。パターンからの外しかたがうまく、会話は笑わせるし、最後のオチもきれいに決まっている。
                                          (北野先生)
大賞 『子宝観音』

 登場人物(?)みんな、のんきで肩の力が抜けているのがいい。子宝を授けると約束して途方に暮れる観音様と、お調子者の薬師如来が「久しぶりやなぁ」と話している構図、見たことないのに、想像してしまう。オチもなかなか凝っていますが、うらぶれた町の片隅で、一服しながらお喋りする観音様と薬師如来様、一度お目通りしてみたいものです。

優秀賞『どぶんこゲル』

 父はカメ、母はカニ、そして僕はどぶの子ゲル、ってあんた誰や? なキャラが立っている。友だちのどぶネズミと竜巻に巻き上げられて地球の掃除屋のホースに詰まる…とくればエコロジーかと思いきや、そっちにはいかず、あくまで子ども好きのする下ネタにこだわったところがよかった。できたら、どぶネズミにも名前をつけてあげてほしいけど。

優秀賞『ビルとすもうを取った少年』

 タイトルがいい。トイレを借りるという出会いも自然。家と友だちになってすもうを取るという発想がおもしろい。どこまでも子どもの視線で、ノスタルジーに陥らず、建替えられたビルとも仲よくなるのがいい。オバちゃんになると、マンションが建つほどの空き家って、さぞ立派な家だったんだろうなと、ついつまらないことを考えてしまうから。

特別賞『淑女(レディ)の魔法の酒樽』

 山賊を飼い馴らして亭主にした淑女のサクセスストーリーか。あるいは野良犬気取りで実は飼われたがっている男と、手を焼くふりがうまい女の化かしあいか。リズム感のあるセリフが巧み。ただ最後まで二人だけで完結してしまったのが残念。山賊の仲間か、旅の邪魔者といった脇役を入れると、ふくらみのある大人の人形劇になるのでは?
                                          (光山 先生) 

最優秀賞 『子宝観音』

 子宝観音にお参りする人間たちの無責任な思いと、本当は何の力もない観音様や薬師如来の人間に対する苦労話や本音の独白がとってもユーモラスに描かれていて、よかった。

 また、動かないはずの観音様や薬師如来を人形劇として動かすことで世界も拡がり、人間の人形とは異なる動きも期待できて、とてもいい作品になると思います。

優秀賞 『どぶんこゲル』

 登場人物たちのキャラクターとダイアローグが、とても生き生きと描かれているなあと感心しました。ゲルや掃除屋ヌウや夢の子など、人形ならではの造形も興味を持て、ファンタジックな作品に仕上がるだろうと期待しました。ただ、あまりにもドブの表現が生々しくて汚すぎるので、一考して欲しい。できれば地球を感じさせながらも、想像の世界の物語として作品化したほうがいいかなと思えました。

優秀賞 『ビルとすもうをとった少年』

 キャラクターを持った家、これは人形ならではの世界でしょう。木造と鉄筋の建物の温度差も見事に描かれています。こういう生き物では無いものが台詞を喋るというのは、人間に対する本音の部分がテーマ的ではなく自然に語れるのでやっぱり人形劇はいいなぁと再発見させられました。

審査委員特別賞 『春夏秋冬・おやじの唄』

 自分自身が親父のせいか、親近感を持って読んでしまった。
 特に作者のいいたいことがストレートに出ながらも堅苦しくなくユーモラスに見えてくるあたりがよかった。そして、親父が夢を見ることで、日常の世界の話から大きくはずれても違和感がなく、ダイナミックな物語として仕上がっていた。休憩の親父クイズは、無くて充分でしょう。
                                           (東口 先生)

審査委員特別賞 『学校へ行こうよ!』

 学校大好き少年・太郎がちょっとしたアクシデントのために毎日学校に遅刻してしまうというテーマがうまく描けている。また家から学校までの短い時間の中に少年が出会う日常的であり、かつスリリングな出来事に好感が持てる。後半の正門前での先生とのやりとりから最後のドンデン返しはおもしろい。ナレーションの使い方もうまいが、全体的に流れるリズミカルな筋立て、テンポの良さがとても良い。                     (秋山 先生) 

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